新型EMIフィルタ設計がEV電源システムの信頼性を向上

新型EMIフィルタ設計がEV電源システムの信頼性を向上

電気自動車(EV)の進化に伴い、高度な半導体技術の統合が自動車用電源システムの革新の基盤となっている。特に、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などのワイドバンドギャップ(WBG)半導体は、従来のシリコン素子を凌駕する電気的特性を実現し、小型化・高効率・軽量化を可能にした。しかし、WBGデバイスはシステム効率を向上させる一方で、高速な電圧・電流変化(高dv/dt・di/dt)による電磁干渉(EMI)の増加という課題をもたらす。これらは伝導ノイズや放射ノイズとして電源ラインや周囲空間に伝播し、車載電子機器の誤動作や信頼性低下の原因となる。

湖北工業大学の研究チームは、この課題に対処するため、ソフトスタート機能を統合した受動型直流EMIフィルタを開発した。24V/2Aの低電圧補助電源システム向けに最適化された本設計は、ノイズ抑制と突入電流軽減の二重機能を有し、現代EVに不可欠な双方向DC-DCコンバータの信頼性向上に貢献する。

従来のアプローチと異なり、研究チームはノイズ源のインピーダンス特性を厳密に分析。実測データに基づき、軍事規格(GJB151B-2013 CE102)の適合が困難だった500kHz~1.8MHz帯域で最大30dBのノイズ減衰を達成した。特に低周波域(100kHz以下)では差動モードノイズに対し20dBの抑制効果を示し、全ての周波数帯で規制値を下回る結果を得た。

ソフトスタート機構では、MOSFETとNTCサーミスタを併用。起動時はNTCの高抵抗が突入電流を制限し、RCタイミング回路によるゲート電圧の緩やかな上昇に伴いMOSFETが漸次導通する。実験では24V入力条件下で120msの起動遅延を確認、23.8Vの安定出力を実現した。この制御によりリレーチャタリングや電圧変動を防止し、部品寿命の延伸に寄与する。

物理実装では表面実装部品と巻線磁性体を採用し、車載環境に適したコンパクトなフットプリントを実現。アクティブ部品を含まない受動構造により、長期信頼性を確保している。応用範囲はEVに留まらず、無停電電源装置(UPS)やグリッド接続インバータなど、厳格なEMC性能が要求される分野への展開が期待される。

今後の課題として、超高周波域における寄生要素の影響が挙げられる。研究チームは、アクティブ・パッシブハイブリッド構成や新材料の検討により動作帯域の拡張を視野に入れている。また、システム全体の信頼性向上に向け、EMIと突入電流を統合的に解決する設計思想は、自動車工学における多機能コンポーネント開発の新たな指針となり得る。

測定データを基にした実践的な設計プロセスは、産業界における採用可能性を高める重要な要素である。標準化された試験環境(LISN)の採用により、自動車メーカーとの連携が期待される。持続可能性の観点からも、電力損失の低減と部品寿命の延伸は電子廃棄物削減に間接的に貢献し、循環型社会の実現に資する。

本研究は、WBG半導体の潜在能力を最大限に引き出しつつシステム全体の整合性を維持する技術的ブレークスルーを示した。自動車業界がEMC規制の強化と性能向上の両立を追求する中、本技術は次世代電動化技術の基盤として重要な役割を果たすだろう。

執筆者:
パン・ワン、フー・シュイ、レイ・ユエン、アンフェイ・シュイ(湖北工業大学)
掲載誌:Journal of Power Supply
DOI:10.1324/j.issn.2095-2805.2024.3.182