変形可能な車体フレームが都市モビリティの課題解決に新風

変形可能な車体フレームが都市モビリティの課題解決に新風

南京理工大学の研究チームは、都市部の移動手段が抱える課題を解決する画期的なソリューションを発表した。学生と教員から構成されるグループは、コンパクト電気自動車向けに設計された伸縮式車体フレームを開発。従来の固定式車軸構造が持つ都市環境での機動性と居住性のトレードオフ問題に新たな選択肢を提示している。

都市化が進展し交通密度が増す現代社会では、駐車スペースの不足や慢性的な渋滞が深刻化している。この状況下で従来型車両が抱える根本的な課題は、物理的な寸法の固定性にある。研究チームが着目したのは、走行条件に応じて車体寸法を動的に変化させるアダプティブ構造の実現だった。

開発の中核を成すのはドロワー式伸縮メカニズムだ。油圧アクチュエーターではなく精密ボールねじ駆動を採用することで、位置決め精度と自己保持機能を両立。消費電力の抑制とメンテナンスフリー化を達成し、電気自動車の特性に最適化されたシステムを構築した。

構造全体は45#鋼材の角形パイプを溶接・ボルト接合で組み立てた非荷重式シャーシで構成される。総重量2,902.4kgの構造体に対して有限要素解析(FEA)を実施。拡張時と収縮時の双方で曲げ・ねじり荷重に対する安全性を検証した。

曲げ負荷シミュレーションでは、平坦路走行を想定し乗員4名(570N×4)、バッテリーパック(500N)、フレーム自体の重量(29,024N)を加味。動的荷重係数2.5を考慮した結果、最大変位は拡張時0.286mm、収縮時0.171mmに収まり、材料の降伏強度355MPaを大きく下回る32MPa台の応力発生を確認。十分な安全余裕を確認した。

片輪が段差に乗り上げるケースを想定したねじり試験では、拡張状態で0.356mmの変形と48.6MPa、収縮時0.370mm変形と56.6MPaの応力を記録。連結部の応力集中が確認されたものの、いずれも許容範囲内の結果を得た。構造全体として十分な剛性と強度を保持することを実証した。

動的特性評価のため実施されたモーダル解析では、基本振動数が拡張時34.36Hzから収縮時43.1Hzに25%向上。車体の剛性増加に伴う振動特性の改善を確認した。振動モードは両状態で類似性を保持し、予測可能なダイナミクス特性を示すことが判明。サスペンション調整やNVH管理において重要な知見を得ている。

研究チームが重視したのは実用性と製造容易性の両立だ。標準構造材を使用し溶接・ボルト組み立てを基本とする設計は、量産化や保守性を考慮したものだ。将来的にはアルミニウム合金や複合材の採用による軽量化や、インテリジェント制御システムとの統合を視野に入れている。

具体的には路面状態や周囲環境をリアルタイムに感知し、車体長を自動調整する機能が想定される。狭路進入時に車長を短縮して機動性を向上させ、高速走行時には安定性確保のために拡張するといった適応制御が可能になる。ナビゲーションシステムとの連動による事前調整機能も将来的な展開として期待される。

現行の研究ではコンパクトEVを対象としているが、技術応用の可能性は幅広い。積載スペースを可変可能な配送車両、居住区画を拡張できるRV、緊急車両の機動性向上など、多様な展開が予測される。ただし実用化に向けては、環境耐久性の検証や衝突安全性の評価が不可欠だ。

研究チームは今後、実車ベースのプロトタイプを作成しシミュレーション結果の実証を進める計画。駆動系の応答速度や実走行時の振動計測、ユーザーフィードバックに基づく人間工学的改良を予定している。摩擦低減や防塵対策、水密性向上といった信頼性強化にも注力する方針だ。

社会的受容性に関しては可動部を有する構造体に対する信頼構築が課題となる。第三者機関による検証データの蓄積や、長期耐久性の実証が重要だ。法規制面でも可変式車両の新しい分類基準確立が必要となるだろう。

この研究成果は機械工学と電気制御の融合領域に新たな可能性を示した点で意義が大きい。従来の自動車設計概念を刷新するアプローチは、都市モビリティの進化に貢献する可能性を秘めている。持続可能な社会構築に向け、次世代交通手段開発の重要な礎となることが期待される。

(研究者)
Shao Wenyang, Zhang Yuanyuan, Guo Shijie, Qian Chenghao, Li Tangsong, Tang Jingyang, Huang Jiaqi, Gao Rui
(所属機関)
南京理工大学
(掲載誌)
Mechanical & Electrical Engineering Technology
(識別子)
DOI: 10.3969/j.issn.1009-9492.2024.02.041