バッテリー交換でシェアEVの運行を最適化

バッテリー交換でシェアEVの運行を最適化

都市の交通システムが持続可能性の転換期を迎えている今、シェアリング電動車両(SEV)は、環境負荷の低減と利便性の向上を両立する次世代モビリティの旗手として注目を集めている。しかし、その普及を阻む課題として、車両の「偏在」と「充電」の二つの壁が長年存在してきた。駐車場に車両が山積みになる一方で、利用者が求めるエリアでは「借りたい時に借りられない」という矛盾。また、航続距離の短さからくる頻繁な充電需要は、車両の稼働率を下げ、運行効率を大きく損なう。これらの課題を根本から解決する画期的な研究が、長安大学自動車学院の李嫚嫚(リ・マンマン)、孫加輝(スン・ジャーフイ)、付穎斌(フ・インピン)、趙博選(ジャオ・ボシュエン)の研究チームによって発表された。

彼らの研究は、国家電網公司が提唱した「集中充電・統一配給(CCUD)」モデルを基盤に、バッテリー交換方式を核としたシェアEVの運行最適化手法を提示している。これは単なる充電方法の変更ではなく、車両の配置、バッテリーの物流、サービス価格設定に至るまで、すべての要素を統合的に最適化する、新たなパラダイムの構築である。この研究は、Journal of Chongqing University of Technology (Natural Science)に掲載され、その成果は、シェアEV事業者の収益性とサービス品質を飛躍的に向上させる可能性を秘めている。

偏在と充電:シェアEVの二大課題

シェアEVの魅力は、所有の負担なく必要な時に必要な場所で車両を利用できる点にある。しかし、その魅力を維持するためには、利用者のニーズと車両の供給が常にマッチしている必要がある。現実には、朝の通勤時間帯にオフィス街に車両が集中し、夕方には住宅地に車両が戻らないという「偏在」が頻発する。この問題を解決するため、業界では主に二つのアプローチが取られてきた。

一つは「ダイナミックプライシング」、つまり需要に応じて料金を変動させる戦略である。車両が過剰なエリアでは料金を下げて利用を促進し、不足しているエリアでは料金を上げて流入を抑制することで、自然に車両の分布を均衡させようとする。これは需要の流れを価格という「見えざる手」で誘導する、経済学的なアプローチだ。

もう一つは「再配置」、すなわち人間の手による物理的な移動である。スタッフがトラックやバンを使って、過剰な車両を不足しているエリアに移動させる。これは確実な方法だが、人件費、燃料費、時間といった莫大な運用コストを伴う。特に大規模なサービスエリアでは、再配置コストが事業の黒字化を難しくする要因ともなる。

そして、もう一つの深刻な課題が「充電」だ。従来のモデルでは、車両が各ステーションで数時間かけて充電を行う。この間、その車両はサービスから外れ、稼働率が下がる。航続距離が短いEVでは、利用者が1回の走行後に充電が必要になるケースも珍しくなく、これが「偏在」をさらに悪化させる。例えば、郊外から市内中心部に向かう利用者は、目的地に着いても満充電の車両がなければ帰れず、逆に市内中心部に車両が滞留するという悪循環に陥る。

CCUDモデル:バッテリー交換のインフラ基盤

李らの研究が目指すのは、この「充電」という時間的制約を、物流の問題に変換することだ。その鍵となるのが「集中充電・統一配給(CCUD)」モデルである。このモデルでは、利用者が交換した空のバッテリーは、すべて発電所の近くにある「集中充電ステーション」に運ばれる。ここで一括して充電が行われ、電力系統への負荷を平準化し、グリッドフレンドリーな運用が可能になる。

充電が完了したバッテリーは、専用の配送トラックによって、各「バッテリー交換ステーション」に配送される。利用者は、わずか数分の交換作業で、満充電のバッテリーを搭載した車両に乗り換えることができる。これにより、車両の「充電待ち」時間がゼロに近づき、稼働率が劇的に向上する。これは、車両の「移動」ではなく、エネルギーそのものを「物流」で供給する、革命的な発想の転換である。

すべてを最適化する統合モデル

従来の研究は、車両の再配置や価格設定、充電計画などを個別に最適化しようとしてきた。しかし、これらの要素は互いに強く影響し合っている。例えば、バッテリー交換ステーションの位置が決まらないと、配送トラックのルートも決まらない。配送ルートが決まらないと、いつ、どのステーションにバッテリーが届くかが不明確になり、車両の運用計画も立てられない。

李らの研究の真骨頂は、この複雑な相互依存関係を解きほぐし、すべてを一つの最適化問題に統合した点にある。彼らは「時空間ネットワーク」という概念を用いて、時間と空間の両次元で車両とバッテリーの動きを追跡し、以下の4つの要素を同時に最適化する非線形混合整数計画(NMIP)モデルを構築した。

  1. バッテリー交換ステーションの立地最適化:どの地点にステーションを設置すれば、利用者の利便性と配送コストのバランスが最も良くなるか。都市の地理的特性、需要の予測パターンを考慮して、最適な配置を決定する。
  2. バッテリー配送ルートの最適化:集中充電ステーションから各交換ステーションへバッテリーを運ぶ配送トラックのルートを最適化する。交通渋滞、距離、トラックの積載量を考慮し、最小のコストで確実にバッテリーを供給する。
  3. 車両運用スケジュールの最適化:車両の利用(乗客とのマッチング)、再配置、そして何より重要な「バッテリー交換のタイミングと場所」を、未来の需要予測に基づいて事前に計画する。満充電の車両が常に必要な場所に存在するよう、先手を打って配置する。
  4. サービス価格の最適化:需要と価格の関係を数式で表現し、需要のピークや谷を滑らかにする最適な料金体系を設計する。これにより、偏在を未然に防ぎ、全体の収益を最大化する。

このモデルの目標関数は、事業者の「利益の最大化」である。収益である利用料金から、駐車場の減価償却費、車両の減価償却費、スタッフの人件費、集中充電ステーションと交換ステーションの減価償却費、配送トラックの走行コスト、電力コスト、バッテリーの交換による減価償却費などを差し引いた純利益を、最大化しようとする。

モデルの変換とアルゴリズムの選定

この統合モデルは、非常に複雑な非線形・非凸問題であり、そのままでは計算機で解くことが極めて困難である。研究チームは、ここで巧妙な「逆変換」の手法を用いた。需要と価格の関係式を逆に解くことで、元の複雑な非線形問題を、より解きやすい「非線形凸問題」に変換した。凸問題は、局所最適解がそのまま大域最適解となるという特性を持つため、信頼性の高い解を得ることができる。

次に、この変換後のモデルを解くための最適なアルゴリズムを検討した。研究チームは、「割線に基づく外的近似法」、「接線に基づく外的近似法」、「ラグランジュ緩和法」の3つの手法を比較した。

「割線に基づく外的近似法」は、最適化の対象となる複雑な関数を、複数の直線(割線)で囲むように近似する。この近似を繰り返し、徐々に最適解に近づけていく。一方、「接線に基づく外的近似法」は、関数に接する接線を用いる。数値実験の結果、接線法は収束が遅く、計算時間が非常に長くなることが判明した。

「ラグランジュ緩和法」は、複雑な問題をいくつかの小さな部分問題に分解するが、分解後の部分問題の解を繰り返し調整する必要があり、全体としての計算効率が必ずしも良いとは限らない。

最終的に、「割線に基づく外的近似法」が、解の質と計算時間の両面で最も優れた性能を発揮した。特に、サービスエリアが拡大する(ステーション数が増える)状況下でも、他の手法が計算時間の制限(3時間)内に解けなくなる中、割線法は比較的短時間で高品質な解を提供できることが示された。

数値実験から見えてきたインサイト

研究チームは、7つのステーションを想定した数値実験を行い、モデルとアルゴリズムの有効性を検証した。その結果、以下の重要なインサイトが得られた。

まず、「偏在」と「バッテリー供給」の問題を別々に考えるのではなく、統合的に最適化することが極めて重要であることが証明された。バッテリー供給の制約を無視して最適な車両運用計画を立てても、実際にはバッテリーが足りず、計画通りに運行できない。逆に、配送トラックの能力を超えてバッテリー交換ステーションを集中させると、物流がパンクする。これらの要素は、歯車のように連動しており、どれか一つを最適化しても、全体としては非効率になる。

次に、潜在的な需要と電力の「入手可能性」が、事業の収益性に大きな影響を与えることが分かった。潜在需要が高まるほど、収益も増加するが、ある時点で「バッテリーの供給能力」がボトルネックとなり、需要を完全に満たせなくなる。つまり、車両を増やすだけでなく、バッテリーの在庫や配送トラックの能力も、需要に合わせて拡張する必要がある。

さらに、バッテリーの容量や配送トラックの積載量を増やすことで、収益が劇的に向上する。例えば、バッテリー容量を20kWhから40kWhに倍増させると、稼働できる距離が伸び、交換回数が減るため、より多くの需要を満たすことができる。同様に、配送トラックの積載量が大きければ、一度に多くのバッテリーを運べるため、交換ステーションの供給力が強化され、車両の稼働率が向上する。この結果は、電力の入手可能性こそが、シェアEV事業の真の制約要因であることを示唆している。

結論と展望

李嫚嫚らの研究は、シェアEVの運行に革命をもたらす可能性を秘めている。それは単に、充電を交換に置き換えるという技術的な進歩ではなく、「車両の移動」と「エネルギーの移動」を分離し、それぞれを最適化するという、根本的な発想の転換である。このアプローチにより、事業者は「偏在」と「充電」の悪循環から脱却し、より効率的で収益性の高いサービスを提供できるようになる。

この研究は、今後のシェアモビリティの発展に明確な指針を示している。事業者は、車両の購入に加えて、バッテリー交換ステーションのネットワークと、その背後にある物流インフラへの投資を検討する必要がある。また、政策立案者にとっては、CCUDモデルを支えるためのインフラ整備や、標準化されたバッテリー規格の策定が、持続可能な都市交通を実現する鍵となるだろう。

未来のモビリティは、一つの技術で完結するものではなく、車両、インフラ、エネルギー、情報が高度に連携したエコシステムである。李らの研究は、そのエコシステムの中核を成す「エネルギー供給の最適化」という課題に、科学的かつ実用的な答えを提示した。シェアEVの本当の可能性が、ここから始まる。

李嫚嫚、孫加輝、付穎斌、趙博選、長安大学自動車学院、Journal of Chongqing University of Technology (Natural Science)、doi: 10.3969/j.issn.1674-8425(z).2024.04.023