中国、水素燃料電池車の新試験基準を導入

中国、水素燃料電池車の新試験基準を導入

自動車産業は、脱炭素化と持続可能なモビリティへの移行という歴史的転換期に立っている。この中で、水素をエネルギー源とする燃料電池電気自動車(FCEV)は、特に長距離輸送や商用車分野において、バッテリー電気自動車(BEV)の課題を補完する有望な技術として注目を集めている。中国は、この技術の商業化を加速させるため、2023年11月に国家標準GB/T 43252-2023「燃料電池電気自動車 エネルギー消費量及び航続距離試験方法」を発表・施行した。この新たな基準は、FCEVの性能評価における透明性と信頼性を高めるものであり、水素社会の実現に向けた重要な一歩である。

これまで、FCEVのエネルギー消費量や航続距離といった基本性能を測定する方法に統一性がなく、メーカーごとに異なる試験条件や方法が用いられていたため、消費者や政策立案者にとって、車両間の性能比較が極めて困難だった。特に、FCEVは燃料電池スタックと補助的な蓄電池(REESS)を組み合わせたハイブリッド構造を取っており、走行中のエネルギー供給源が複数存在する点が、性能評価の複雑さを生んでいた。蓄電池は回生ブレーキで回収したエネルギーを蓄え、加速時のパワーブーストに活用するが、その貢献度合いを正確に把握し、燃料電池からの水素消費量と分離して評価することが課題だった。GB/T 43252-2023は、この技術的課題に直接対応し、科学的で再現性の高い試験プロトコルを確立した。

この基準の最も革新的な点は、車両の構造的特徴に基づいた分類システムを導入したことにある。FCEVを、蓄電池の役割の大きさに応じて「Aタイプ」と「Bタイプ」の2つのカテゴリーに分ける。この分類は、試験中に蓄電池がどれだけのエネルギーを純粋に供給(または吸収)したかを示す「α値」を指標としている。具体的には、蓄電池のエネルギー変化量と、消費した水素から得られるエネルギー量の比率を計算する。このα値が1%以下の場合、車両は「Aタイプ」と分類される。これは、走行に必要なエネルギーの99%以上を燃料電池が供給しており、蓄電池はあくまで補助的な役割(例:加速支援、回生回収)に留まっていることを意味する。一方、α値が1%を超える場合は「Bタイプ」とされ、蓄電池が走行に直接的かつ有意なエネルギーを供給している、いわば「プラグインハイブリッド」的な性格を持つ車両であると判断される。

この分類は、試験方法そのものに直接的な影響を与える。Aタイプ車両に対しては「短縮法」が適用される。蓄電池の貢献が極めて小さいため、実際の水素タンクを完全に空にする必要はなく、効率的な評価が可能になる。具体的には、規定の走行サイクルを6回連続で走行させ、その際の水素消費量と走行距離を測定する。このデータを基に、100kmあたりの水素消費量を算出し、さらにタンクの総水素量から理論的な航続距離を比例計算で導き出す。この方法は、大型商用車のように大量の水素を搭載する車両の試験時間を大幅に短縮でき、リソースの効率的な利用を可能にする。

一方、Bタイプ車両には「走りきり法」が適用される。これは、車両が持つすべてのエネルギーを完全に使い切るまで試験を継続する方法である。目的は、燃料電池と蓄電池という二つのエネルギー源の貢献度を明確に分離し、それぞれのエネルギー消費量を正確に評価することにある。試験は、厳密に満タンにされた水素タンクと、規定の充電状態(SOC)に調整された蓄電池から始まる。その後、規定の走行サイクルを繰り返し、車両がシステム警告を発したり、走行速度を維持できなくなったりするまで走行を続ける。この時点で測定された距離が、その車両の実測航続距離となる。

試験終了後のデータ処理が、Bタイプ車両評価の鍵を握る。まず、走行中に消費された水素の質量を測定し、これに水素の低熱量を乗じることで、燃料電池から得られたエネルギー量を算出する。次に、走行後に蓄電池を外部電源から完全に充電する。この際に外部電源から供給された電力量が、試験中に蓄電池が車両の駆動に供給した「純粋なエネルギー量」に相当する(充電効率を考慮した補正が必要)。この二つのエネルギー量(燃料電池由来と蓄電池由来)を合計し、実測航続距離で割ることで、車両の総合的なエネルギー効率を評価できる。さらに、それぞれのエネルギー源が航続距離にどれだけ寄与したかを、そのエネルギー量の割合に基づいて計算することが可能になる。これにより、「この車の航続距離のうち、XX%は水素、YY%はバッテリーで走った」という、消費者にとって非常に分かりやすい情報が提供される。

試験の信頼性を確保するため、基準は細部まで厳密な手順を規定している。例えば、試験前の「浸透(soak)」時間は最低2時間、温度は23±3℃に保つ必要がある。これは、車両各部の温度が安定し、試験結果に影響を与える変動要因を排除するためだ。また、ロードローラーでの走行抵抗の設定も重要で、GB/T 18352.6-2016などの関連基準に従って、実際の道路走行時の抵抗を正確に再現しなければならない。さらに、水素の充填プロセスも非常に重要である。タンクが本当に「満タン」かどうかを正確に判断するため、「粗充填」と「精密充填」という二段階のプロセスが定められている。特に「精密充填」では、充填後のタンク内温度と圧力が安定するまで2時間待機し、その後の圧力が計算された目標値と一致するかを確認する。これにより、温度変化によるガス体積の変動を補正し、真の満タン状態を実現する。

中国は、上海、広東、北京・天津・河北など複数の地域に水素モビリティの実証区域を設けており、FCEVの実用化を強力に推進している。このような中で、GB/T 43252-2023のような統一された試験基準の存在は、政策の効果を正確に測定し、インセンティブ制度を適切に設計するために不可欠である。メーカーにとっては、開発の指針が明確になり、国際的な競争力の強化にもつながる。検査機関にとっては、一貫性のある評価が可能となり、結果の信頼性が高まる。そして何より、消費者にとっては、複雑な技術的背景を理解しなくても、信頼できる性能データに基づいて購入判断を下せるようになる。これは、新技術の普及にとって最も重要な要素の一つである。

Wu Shiyu, Wang Guozhuo, Wang Zhijun, Guo Ting (China Automotive Technology Research Center Co., Ltd. and China Automotive Inspection Center (Tianjin) Co., Ltd.) analyzed the application of this standard in Standard Science 2024, No. 3, DOI: 10.3969/j.issn.1674-5698.2024.03.017. Their work provides essential guidance for industry professionals, emphasizing the importance of meticulous vehicle preparation, precise dynamometer calibration, and rigorous hydrogen handling, and underscores how this standard is a fundamental pillar for the future development of fuel cell vehicle technology.