中国、EV用バッテリー新規格で性能評価を革新
中国の電気自動車(EV)産業における画期的な進展として、最新の国家規格「GB/T 31467—2023」が正式に発効された。この規格の正式名称は「電気自動車用リチウムイオン動力バッテリーパックおよびシステムの電気的性能試験方法」であり、EV用バッテリーの性能評価の枠組みを根本から再定義するものである。従来の分断された規格を統合し、実際の走行条件を反映したより現実的なテスト手法を導入することで、中国は世界のEV技術標準をリードする立場をさらに強化している。
この新たな規格は、中国自動車技術研究センター(CATARC)によって策定された。CATARCは中国を代表する自動車分野の研究・標準化機関であり、その専門性が本規格の信頼性と権威性を支えている。本規格の最大の特徴は、2015年に制定された二つの分離した規格——高出力用途の「GB/T 31467.1—2015」と高出力用途の「GB/T 31467.2—2015」——を一本化し、統一されたフレームワークを提供している点にある。この統合は、現代のEV市場が「長距離走行」と「高パフォーマンス」という二つの相反する要件を同時に満たさなければならないという現実を反映したものであり、技術の成熟と市場の統合を象徴している。
従来の規格では、バッテリーの性能は主に定電流放電や定電圧充電といった、実際の走行とはかけ離れた理想的な条件下で評価されていた。しかし、消費者の関心は単なる「容量」や「最大出力」から、より実用的な「充電時間」や「寒い日の走行性能」へと移行している。GB/T 31467—2023は、この市場の声に応える形で、従来のテスト項目に加え、3つの全く新しい評価項目を正式に導入した。
第一に挙げられるのが「エネルギー密度」の評価である。エネルギー密度は、バッテリーの重量または体積あたりに蓄えられるエネルギー量を示し、EVの航続距離を決定する最も重要な指標の一つである。それにもかかわらず、それまで中国国内には、エネルギー密度を測定するための正式な国家性能試験規格が存在していなかった。各メーカーは独自の方法で測定し、その結果を公表していたため、消費者にとっては比較が困難であり、公平性にも疑問が生じていた。GB/T 31467—2023は、この課題を解決するため、エネルギー密度の測定方法を明確に規定し、測定条件や計算式を標準化した。これにより、メーカー間の比較が可能となり、消費者はより正確な情報をもとに車両を選択できるようになる。
第二の革新は「充電性能」の評価である。急速充電インフラの整備が進む中、「何分で何%充電できるか」は、EVの実用性を左右する決定的な要素となっている。新規格では、単に室温での充電速度を測るだけでなく、4つの異なる温度条件下での充電テストを義務付けている。具体的には、常温、高温(40℃)、低温(0℃)、そして製造業者と顧客が合意した最低温度(Tmin)の4条件である。この多温度アプローチは、バッテリーが極端な環境下でも安全かつ効率的に充電できるかを検証するもので、特に冬の寒さや夏の酷暑における実用性を評価する上で極めて重要である。テスト結果には、電圧、電流、温度、充電状態(SOC)の変化を記録した詳細なデータ曲線の提出が求められており、バッテリー管理システム(BMS)のアルゴリズムの優劣を深く分析できる。
第三に、最も革命的な変更は「運転条件放電」(工況放电)の導入である。これは、従来の定電流放電から、実際の道路走行を模した動的負荷テストへの大きな転換を意味する。新規格では、中国独自の走行サイクルである「中国ライト-duty車両テストサイクル」(CLTC)に基づいた負荷パターンの使用を推奨している。CLTCは、中国の大都市における典型的な渋滞、頻繁な発進・停止、中程度の速度帯を反映しており、WLTPやNEDCなどの従来のサイクルよりも、中国市場における実際の航続距離を正確に予測できるとされている。このテストにより、瞬間的な加速力、回生ブレーキによるエネルギー回収、そして複雑な負荷変動に伴うバッテリーの応答性が、リアルな条件下で評価される。これにより、カタログ上の航続距離と実際の走行距離との乖離が大きく縮小され、消費者の信頼を高めることが期待される。
これらの新設項目に加え、GB/T 31467—2023は既存のテスト項目に対しても、細部にわたる精緻化と統一化を図っている。例えば、「無負荷容量損失」のテストでは、高温保管の温度条件が40℃から45℃に引き上げられた。これは、夏場に駐車した車両が直射日光の下で45℃を超える温度に達することを想定したもので、より過酷な条件下でのバッテリーの長期安定性を評価できる。
また、「環境適応」の定義も厳格化された。従来は一定時間の静置で「熱平衡」を判断していたが、新規格では、1時間の間にバッテリー単体の温度が目標環境温度から±2℃以内に収まり、かつアクティブ冷却が停止している状態を満たす必要があると規定している。これにより、テスト開始時のバッテリー内部の温度ムラが最小限に抑えられ、結果の再現性と信頼性が大幅に向上する。
データ収集の要件も強化された。テスト中のデータ記録間隔は、従来の「放電・充電時間の1%ごと」から「100秒以内」に短縮された。これにより、パルステストや効率測定時の微細な電圧・電流の変動を高解像度で捉えることが可能になり、バッテリーシステムの動的挙動をより正確に解析できる。
パワーテストにおいても、サンプリング間隔が100ミリ秒以下とされ、電圧の瞬時変化を精密に捉えることが可能になった。さらに、テスト中にバッテリー電圧が上限に達した場合の保護メカニズム(電流の段階的低下)や、低温下での充電禁止など、バッテリーの安全と耐久性を守るための明確なガイドラインが設けられている。
高エネルギー型バッテリー向けの「エネルギー効率」テストでは、時代に合わなくなった「20C放電」や「15C充電」といった固定された高電流条件が削除され、バッテリーが実際にサポート可能な最大パルス電流(I’max)に基づくテストに変更された。これは、テストが現実の使用状況をより正確に反映することを意味し、不自然な高負荷を強いることで得られる非現実的な性能データを排除する狙いがある。
このように、GB/T 31467—2023は、単なる技術的更新ではなく、中国のEV産業が「量」から「質」への転換を遂げ、消費者の真のニーズに応える成熟した市場に進化していることを示す重要なシグナルである。規格の策定過程では、国際規格ISO 12405-4:2018を参考にしながらも、中国の独特な気候条件や走行実態を反映した独自の改善を加えることで、グローバルスタンダードとローカルニーズの両立を図っている。
この新規格の影響は計り知れない。まず、自動車メーカーとバッテリー供給業者にとっては、より明確で一貫性のある開発・検証の指針が与えられ、開発コストの削減と製品の品質向上が期待される。次に、独立系の試験機関にとっては、テスト手法の統一により、異なる機関間での結果の比較が可能となり、公正な競争環境が整う。そして何より、消費者にとっては、より信頼性の高い性能データに基づいて購入判断を下せるようになる。
GB/T 31467—2023は、中国がEV技術の「ルールメーカー」としての地位を確立したことを象徴している。今後、この規格は中国国内にとどまらず、世界のEV開発に大きな影響を与える可能性を秘めている。中国製EVやバッテリーが世界市場で競争力を維持し続けるための、新たな基盤がここに築かれた。
Niu Pingjian, Hao Weijian, Su Zhiyang, Shi Shengkun, Liu Shaohui, China Automotive Technology and Research Center Co., Ltd., Energy Storage Science and Technology, doi: 10.19799/j.cnki.2095-4239.2024.0288