非均一チャンネル液冷プレートでバッテリー冷却性能を向上

非均一チャンネル液冷プレートでバッテリー冷却性能を向上

電動車両(EV)の市場が急速に拡大する中、走行性能や安全性、そしてエネルギー効率に対する要求はますます高まっている。その中で、リチウムイオンバッテリーの熱管理は、EVの信頼性と寿命を左右する最も重要な技術課題の一つとなっている。バッテリーは25~45℃の範囲内で動作することが理想とされているが、急速充電や高速走行、さらには高温環境下では、容易にこの範囲を超え、性能の低下や、最悪の場合、熱暴走(Thermal Runaway)を引き起こす危険性がある。また、バッテリーモジュール内のセル間で5℃を超える温度差が生じると、セルの不均一な劣化が進行し、全体の寿命が短くなる。こうした問題を解決するために、広東工業大学材料・エネルギー学院のLiu Jiaxin(リュウ・ジアシン)とWang Changhong(ワン・チャンホン)教授の研究チームは、画期的な新技術を開発し、学術誌『Energy Conservation』にその成果を発表した。

彼らの研究の核心は、「非均一チャンネル」を備えた複合型液冷プレートの設計にある。従来の液冷プレートは、多数の平行なチャンネルに冷却水を流すことでバッテリーの熱を奪うが、その構造上、冷却水の流れが均等に分配されないという根本的な問題があった。冷却水は抵抗の少ない経路を好んで流れ、結果として一部のチャンネルには多くの水が流れ、他のチャンネルには水が十分に行き渡らない「流量の不均一性」が生じる。これにより、バッテリーの一部は十分に冷却されるが、他の部分は過熱するリスクが高まり、温度均一性が損なわれる。この課題を克服するために、研究チームは、チャンネルの幅を入口から出口に向かって徐々に狭くする「非均一チャンネル構造(構造A)」を考案した。

この設計の発想は、流体力学的な観点から非常に洗練されている。入口付近ではチャンネルが広く、流れの抵抗が小さい。しかし、出口に向かうにつれてチャンネルが狭くなり、流れの抵抗が徐々に増加する。この構造により、冷却水は「楽な道」だけを進もうとするのではなく、各チャンネルに均等に分配されるよう強制される。研究チームは、Ansys Fluent 2022R1を用いた詳細な数値シミュレーションを通じて、この構造の効果を検証した。その結果、従来の均一チャンネルと比較して、非均一チャンネル構造は顕著な性能向上を示した。特に、入口流速が0.08 m/sを超える領域では、その優位性が明確になった。具体的には、非均一チャンネル構造では、入口流速0.16 m/sの条件下でバッテリーモジュール内の温度差を5℃未満に抑えることに成功した。一方、従来の均一チャンネルでは、同じ温度均一性を達成するためには、より高い0.2 m/sの流速が必要だった。これは、非均一チャンネル構造が、より低いポンプ出力(=少ないエネルギー消費)で同等以上の冷却性能を実現できることを意味している。さらに重要なのは、この性能向上が、僅か5.51 Paの圧力損失の増加で達成された点だ。これは、冷却システムのポンプが消費する電力に直結するため、実用上、ほとんど無視できるレベルの増加であり、非常に効率的な設計であることを示している。

しかし、研究チームはこれに留まらず、さらなる革新を加えた。それは、相変化材料(PCM: Phase Change Material)を組み合わせた「複合型液冷プレート」の開発である。PCMは、特定の温度(この研究では38~40℃)で固体から液体に変わる際に、大量の熱(潜熱)を吸収する特性を持つ。このプロセスでは、材料自体の温度はほとんど上昇しない。研究チームは、非均一チャンネル構造の液冷プレートのチャンネル間の空間に、このPCMを埋め込んだ。これにより、アクティブな冷却(ポンプで水を流す)とパッシブな冷却(PCMが熱を吸収する)の長所を融合させたハイブリッドシステムが完成した。

この複合構造の効果は、特に低流速の条件下で顕著に現れた。冷却水の流速が遅いと、対流による熱交換の効率が低下する。しかし、その場合でも、バッテリーから発生する熱はPCMに吸収され、PCMが相変化することで温度の急上昇を抑えることができる。シミュレーションでは、入口流速0.12 m/sという比較的低い条件で、複合型液冷プレートは、純アルミニウム製の非均一チャンネルプレート(基準モデル)と比較して、バッテリーの最高温度を0.23℃、セル間の温度差を0.17℃低減することに成功した。これは、ポンプの負荷を抑えながら、より優れた冷却性能を発揮できることを意味している。つまり、都市部のストップ&ゴーの運転や、頻繁に充電を行う日常的な使用シーンにおいて、このシステムは非常に高い実用性を持つ。エネルギーを無駄にせず、効率的にバッテリーを守ることができるのだ。

また、研究は冷却水の入口温度という重要な運用パラメータにも着目した。直感的には、より冷たい水を使った方が冷却効果が高くなると考えがちだ。しかし、研究チームは、ここにもトレードオフがあることを明らかにした。冷却水はプレートを通過する過程で徐々に熱を吸収し、出口に向かって温度が上昇する。そのため、入口付近のバッテリーは冷たい水で効果的に冷却されるが、出口付近のバッテリーはすでに温まってしまった水でしか冷却できない。この結果、バッテリーモジュールの入口側と出口側で大きな温度差が生じてしまう。実際のシミュレーションでは、入口水温を30℃や31℃といった低温に設定すると、確かにバッテリーの最高温度は下がったが、その反面、セル間の温度差は5℃を超えるまでに拡大した。

この問題を解決する鍵は、入口水温を「バッテリーの初期温度に近づける」ことだった。研究では、入口水温を34℃に設定した場合、温度差が4.97℃にまで低下し、安全基準を満たすことができた。この温度は、多くの高温環境下でのバッテリーの初期温度とほぼ同じである。この運用方法の利点は大きい。わざわざ冷却装置を使って水を外気温よりも冷たくするための追加エネルギーを消費する必要がない。これは、HVAC(暖房・換気・空調)システムの負荷を軽減し、EVの航続距離を直接的に延ばすことに貢献する。つまり、過度に冷却するのではなく、適切な温度で運用することで、システム全体のエネルギー効率を最大化するという、非常にスマートなアプローチである。

この研究の意義は、単に一つの優れた冷却プレートを設計したことにとどまらない。それは、EVの熱管理システムの設計哲学に新たな視点を提供している。従来のアプローチは、冷却能力を高めるために、より多くの水を流す(高流速)、より冷たい水を使う(低温化)という、エネルギーを投入する方向に偏っていた。しかし、LiuとWangの研究は、「構造の最適化」と「材料の賢い選択」と「運用条件の最適化」の三つを統合することで、より少ないエネルギーでより高い性能を達成できることを実証した。これは、持続可能性を重視する現代のEV開発にとって、極めて重要なパラダイムシフトである。

実際の車両への応用を考えると、この技術の利点はさらに広がる。まず、PCMはアルミニウムよりも軽いため、冷却システム全体の軽量化が可能になる。EVでは、軽量化は航続距離の向上に直結するため、これは大きなアドバンテージとなる。また、この複合型冷却システムは、急激な負荷変動(急加速や急ブレーキ)に対して非常に強い。急激な発熱が発生した瞬間、PCMがその熱を瞬時に吸収し、バッテリーの温度上昇を緩やかに保つ。その後、冷却水がその熱をゆっくりと外に運び出す。このように、PCMが「ショックアブソーバー」の役割を果たすことで、バッテリーマネジメントシステム(BMS)が過度に反応するのを防ぎ、よりスムーズで安定した制御が可能になる。

研究チームは、実験データとシミュレーション結果の比較を行い、そのモデルの信頼性を検証した。4C放電、環境温度35℃という厳しい条件下で、実測されたバッテリー表面温度とシミュレーション結果の最大誤差は約1℃と、非常に高い精度を確認している。この精度は、この研究が単なる理論的な考察ではなく、実用化に向けた信頼できる基盤を提供していることを示している。

結論として、Liu JiaxinとWang Changhongの研究は、EVのバッテリー熱管理技術に新たな地平を切り開いた。彼らが提案する非均一チャンネルとPCMを組み合わせた複合型液冷プレートは、最終的に入口流速0.12 m/s、入口水温34℃という、エネルギー消費を極力抑えた条件下で、バッテリーの最高温度40.48℃、温度差4.96℃という、安全かつ高性能な運用が可能であることを示した。これは、効率と性能、そして持続可能性の三つの要素を巧みに融合した、真に進化した熱管理ソリューションの誕生を意味している。今後のEV開発において、この研究の知見は、より安全で、より長寿命で、より効率的なバッテリーシステムの実現に向けた重要な指針となるだろう。

Liu Jiaxin, Wang Changhong, 材料・エネルギー学院, 広東工業大学, Energy Conservation, doi:10.3969/j.issn.1004-7948.2024.10.001