中国、実際の走行を反映した軽自動車エネルギー表示制度を全面改正

中国、実際の走行を反映した軽自動車エネルギー表示制度を全面改正

自動車のエネルギー消費情報を現代の走行環境と消費者の期待に沿うように改めるため、中国は軽自動車向けエネルギー表示基準を抜本的に改訂した。2024年7月1日より施行される新基準GB 22757.1-2023およびGB 22757.2-2023は、実験室データと実走行性能の乖離を埋める包括的な変更を導入。規制当局が主導し、業界専門家の技術分析を踏まえたこの改正は、自動車分野における透明性向上、消費者保護、脱炭素化への取り組みを反映している。

新基準はガソリン車、ディーゼル車、電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)のエネルギー効率表示方法を大きく転換。従来の新欧州ドライビングサイクル(NEDC)に依存していた旧基準に代わり、世界統一試験サイクル(WLTC)と中国独自のCLTC(China Light-Duty Vehicle Test Cycle)の双方を採用。中国固有の交通パターンや運転行動を考慮しつつ国際比較を可能にする二重枠組みを構築した。

注目すべきは「特殊シナリオ」試験データの導入。冷房使用時や寒冷地、高標高地域など実走行でエネルギー消費が急増する状況を想定し、補足情報の開示を義務付けた。これにより、カタログ数値と実使用感の乖離による消費者の不信感解消を目指す。

内燃機関(ICE)車両向け表示では100km当たり燃料消費量やCO₂排出量の基本項目を維持しつつ、WLTC/CLTC基準に基づく算出方法を厳格化。文字サイズやレイアウトを刷新し、視覚的な分かりやすさを向上させた。

電動車両の表示改革はさらに急進的。BEVについてはCLTC基準の走行距離に加え、100km当たりの電力消費量(kWh)の表示を義務化。全国平均電力単価を用いた年間エネルギー費用の推計値も新規追加され、従来車との経済性比較が可能となった。

PHEVは電動走行モードとハイブリッドモードの両方で別々の数値開示を要求。従来の電気モードのみの好数値強調を防ぐため、総合エネルギー消費量やブレンド燃費の表示を厳格化した。

画期的な試みが電子エネルギーラベルの導入。従来の物理ラベルに加え、QRコードでアクセス可能なデジタル表示を任意で追加。政府運営プラットフォーム「中国車両エネルギー消費照会」では動的なデータ比較や過去モデルとの対照、詳細試験報告書の閲覧が可能。現時点では任意だが、将来的な義務化を見据えたデジタル化への布石となる。

電子ラベルには主要数値とQRコードを記載した物理媒体(ステッカーまたはカード)を併用。スマートフォン非保有者への配慮しつつ、将来的なコネクテッド車両システムとの連携を見据えたハイブリッド方式を採用した。

技術基準にとどまらず、「リーダー値」の定義を刷新。エネルギー効率が最高水準の車種を示すこの指標を、市場上位10%の車両を基準に動的に設定。米国やEUのベンチマーク制度に倣い、継続的な技術革新を促す競争メカニズムを構築した。

今回の改正は中国が世界最大の自動車市場かつEV普及の中心地となる中で実施される。年間3,000万台超の軽自動車販売において、表示制度の精度向上は排出量削減や燃料輸入依存度低下、消費者の合理的選択を通じた社会利益創出に寄与する。

国際比較では、米国の詳細な燃料コスト推計や温室効果ガス評価、EUの加盟国ごとの断片化した制度と異なり、中国は科学的厳密性を保ちつつ表示の簡潔性を追求。日本の税区分中心の簡素な制度や韓国の5段階カラー評価、アルゼンチン・南アフリカのQRコード導入動向とも一線を画す。異なる動力系統(ICE/BEV/PHEV)を単一枠組みで統合管理する点が最大の特徴で、自動車メーカーの規制順応コスト削減に貢献する。

自動車メーカーへの影響は甚大。2024年7月以降、3.5トン未満の新型車(乗用車M1、小型バスM2、軽商用車N1)は全て新基準への適合が必須。既存モデルにも猶予期間が設けられるが、エネルギー効率が購入決定要因として重要性を増す市場環境下で、対応の遅れは競争力低下を招くリスクがある。

政策面では「二酸化炭素排出ピークアウト(2030年)・カーボンニュートラル(2060年)」目標との整合性を強化。エネルギー性能の透明化を通じ、個人の選択が国家目標達成に直接寄与する仕組みを構築。同時に、メーカー間の公平な競争環境を整備し、根拠に基づくマーケティングを促す。

基準策定には上海汽車集団(SAIC)とゼネラルモーターズ(GM)の合弁企業である汎アジア技術自動車センターの専門家が参画。学界・業界・規制当局の協働により、科学的正当性と実用性のバランスを追求し、技術革新を阻害しない範囲での規制強化を実現した。

将来的には電子ラベルの義務化が予測され、車載テレマティクスやリアルタイムエネルギー監視との連携が進む可能性がある。水素燃料電池車の登場を見据え、新エネルギー源への対応可能な柔軟な枠組み設計も特徴だ。

中国市場を目指す外資メーカーは新基準順応が必須条件。同国では型式認証と事後監視を通じた厳格な運用が行われており、虚偽表示には罰則が科される。試験プロトコルの更新、データ管理システムの整備、ラベル作成ワークフローの再構築が急務となる。

消費者団体は「実用的な情報開示により購入判断が容易になる」と改正を評価。広州や成都でのパイロットプログラムでは、費用推計値やQRコード情報への消費者の関心が高く、制度への信頼性向上が確認されている。グリーンウォッシング対策としても標準化された政府検証情報の意義は大きい。

総じて中国2023年エネルギー表示基準は、自動車産業の透明性向上政策の成熟形と言える。国際的な試験基準の調和、実走行変数の組み込み、デジタルアクセスの可能化、多様な技術の統合管理により、新興・先進市場双方におけるエネルギー情報開示の新たな基準を確立した。自動車の電動化と持続可能性が加速する中、こうした表示制度改革は単なる規制遵守を超え、日常運転における信頼できる指標としての役割を強めていく。

執筆者
周暁珍(シュウ・ギョウチン)、梁麗娟(リョウ・レイケン)、胡妍(コ・ケン)、彭克新(ホウ・コクシン)
汎アジア技術自動車センター株式会社
掲載誌
標準化レビュー 2024年第16号(通巻661号)8月増刊
DOI
10.3969/j.issn.1002-5944.2024.16.017