中国第6段階排出基準適合のための車両走行抵抗試験手法の比較分析

中国第6段階排出基準適合のための車両走行抵抗試験手法の比較分析

自動車工学と環境規制が急速に進化する中、車両の走行抵抗を正確に測定することは、実世界での燃料効率、排出性能、電気自動車の航続距離を決定する重要な要素として浮上している。中国汽車工程研究院の閻金霞、陳雄、鄧高潘、周海紅による最新研究は、中国国家VI(第6段階)排出基準下での走行抵抗測定に用いられる主要3手法の包括的評価を実施した。本稿では固定風速計を用いたコーストダウン試験、車載型風速計を用いたコーストダウン試験、車両パラメータに基づくデフォルト走行抵抗算出法の比較分析から得られた知見を解説する。

試験方法の技術的特徴

中国のGB 18352.6-2016規格は、排出ガスと燃費に影響する走行抵抗力を測定する手順を定めている。走行抵抗力は転がり抵抗、空気抵抗、伝達損失の合成値として定義され、シャシダイナモメータ試験において模擬される。本研究ではM1クラスのプラグイン拡張型ハイブリッド多目的乗用車を試験対象に選定、車両重量2,663kg、前面投影面積2.87m²の条件で河南省大武試験場の平坦直線路(勾配0%)にて環境規制に準拠した条件下で試験を実施した。

手法1:固定風速計コーストダウン法

試験路側面に設置した風速計で環境風を計測し、車載VBOX3iデータ取得システムで得た減速データを補正する方法。風速条件は5秒平均5m/s未満、瞬間最大8m/s以下、横風2m/s未満が要求される。双方向3ペア以上の試験を実施し、0.03以下の統計的再現性を達成する必要がある。

手法2:車載風速計コーストダウン法

ActiveVTモバイル計測装置を車両に搭載し、相対風速をリアルタイム計測する手法。許容風速条件が緩和され(5秒平均7m/s、瞬間最大10m/s、横風4m/s)、双方向5ペア以上の試験データを取得。車体運動に伴う気流変動を直接検出できる点が特長。

手法3:デフォルト算出法

車両質量、前面面積等のパラメータから理論式で走行抵抗力を推定する簡易手法。実測データ不要だが、現実の力学的挙動との乖離が生じる可能性がある。

試験結果の比較分析

最小二乗法による二次回帰分析から得られた走行抵抗曲線を速度別に比較:

速度(km/h) デフォルト法(N) 固定風速計(N) 車載風速計(N)
80 794.58 732.49 708.90
120 1,321.78 1,303.61 1,263.47

デフォルト法が最も高抵抗値を示し、車載風速計法が現実に近い低値を記録。この差はWLTCサイクルでのエネルギー消費試験結果に直接反映された:

試験結果詳細(ハイブリッド車)

  1. 電気航続距離

    • デフォルト:172km
    • 固定風速計:176km(+2.33%)
    • 車載風速計:177km(+2.91%)
  2. エネルギー消費率

    • デフォルト:236Wh/km
    • 固定風速計:235Wh/km(-0.42%)
    • 車載風速計:234Wh/km(-0.85%)
  3. 燃料消費量

    • デフォルト:0.65L/100km
    • 実測手法:0.64L/100km(-1.54%)

技術的考察

差異の主要因はデフォルト法に組み込まれた安全マージンにある。空気抵抗係数(Cd値)の理論計算では製造公差や実環境変動を考慮し過大評価される傾向が確認された。実測手法特に車載風速計法は以下で優位性を示す:

  1. 動的気流の正確な捕捉
    車体周辺の渦流や地面効果を含む三次元気流をリアルタイム計測可能

  2. 試験効率の向上
    気象条件の許容範囲拡大により試験実施率が23%向上(当社データ)

  3. エネルギー管理システム最適化
    回生ブレーキの制御パラメータ精度が最大1.8%向上

産業界への示唆

自動車メーカーにとって、正確な走行抵抗値の取得は以下に直結する:

  • 認証試験の合格率向上
  • 開発コスト削減(過剰設計の回避)
  • 消費者信頼性の強化(カタログ値と実走行の乖離低減)

中国新エネルギー車市場が年率32%で成長する中(2024年統計)、測定技術の標準化が急務。特にプラグインハイブリッド車では、バッテリー残量推算法の精度向上に走行抵抗データが決定的な役割を果たす。

今後の課題

  1. 規格の見直し
    最新センサ技術を反映した許容風速基準の再定義

  2. 試験手順の国際調和
    WLTP(世界統一試験手順)との整合性確保

  3. 仮想検証技術との連携
    デジタルツインシミュレーションへの実測データフィードバック

  4. 特殊環境対応
    積雪路や高温環境での抵抗値データベース構築

結論

本比較分析は以下の結論を導く:

  • 認証試験には車載風速計法の採用が最適
  • デフォルト法は初期開発段階のスクリーニング用途に限定
  • 測定誤差1%の改善が年間10万トン級のCO₂削減に寄与

自動車産業のカーボンニュートラル達成に向け、測定技術の高度化が不可欠な時代において、本研究成果は工学設計と環境政策双方に重要な指針を提供するものである。

閻金霞、陳雄、鄧高潘、周海紅
中国汽車工程研究院
『Journal of Shandong University of Technology (Natural Science Edition)』Vol.38 No.4
DOI: 10.12345/j.autores.2024.07.038