代客充電サービスのためのEV充電ステーション最適配置

代客充電サービスのためのEV充電ステーション最適配置

電気自動車(EV)市場は爆発的な成長を遂げている。中国自動車工業協会の統計分析によると、2022年3月の中国における新エネルギー自動車の生産台数と販売台数はそれぞれ46万5000台、48万4000台に達し、前年同月比で1.1倍の大幅な増加を記録した。市場シェアは21.7%に達し、急速な成長を続ける勢いを維持している。しかし、充電が困難で、充電時間も長く、頻繁に行列が発生するといった問題は、新エネルギー自動車ユーザーが「充電したくないが、時間が取れない」というジレンマに直面させることが多く、ユーザーの満足度を大きく損なっている。これらの問題を解決するために、新たなサービスモデルが登場した。それが「代客充電サービス」だ。

ユーザーは代客充電アプリを通じて予約を行うと、充電スタッフが指定された時間内にユーザーの位置まで到着し、ユーザーの車両を近くの充電ステーションまで運び、充電を完了した後、再びユーザーの元へと車両を返却する。このサービスは、ユーザーが自ら充電ステーションまで車を運転し、長い待ち時間に耐えるという負担を完全に取り除く。特に都市部の忙しいユーザーにとっては、非常に魅力的なソリューションである。代客充電サービスモデルの研究は、都市の充電負荷の緩和、ユーザーの充電や待ち時間に対する不安の軽減、そして新エネルギー自動車の潜在的なユーザー層の探求において、極めて重要な意義を持つ。

近年、電気自動車(EV)充電ステーションの最適な分布を求める問題は、国内外の研究者たちの間でホットな研究トピックとなっている。しかし、代客充電サービスモードにおける充電ステーションの立地問題に関する研究は、依然として少数派である。本研究では、ユーザーの充電需要の確率的性質を考慮し、2段階確率混合整数計画法(Two-stage Stochastic Mixed-Integer Program, TSMIP)を用いたモデルを構築した。その上で、ユーザーが代客充電サービスを選ぶ割合を、充電時間コストと代客充電サービスの価格を統合して算出。このパラメータを組み合わせることで、充電インフラの建設コストとEVユーザーが充電ステーションまで移動する際の移動コストを最小化しつつ、代客充電事業の利益を最大化するという、多目的のTSMIPモデルを開発した。この多目的TSMIPモデルを解くために、サンプル平均近似法(Sample Average Approximation, SAA)とイプシロン制約法(Epsilon constraint method)を用い、充電ステーションの立地戦略が代客充電サービスの運営に与える影響を調査した。

本研究の核心は、ユーザーの行動を定量的にモデル化することにある。ユーザーが代客充電を選ぶかどうかは、単純な価格比較ではない。ユーザーが「時間」にどれだけの価値を置いているかが鍵となる。研究チームは、ユーザーの「単位時間あたりのコスト」が一様分布に従うという仮定を置いた。これは、あるユーザーにとっては1時間の価値が非常に高く(例えば、高収入のビジネスパーソン)、別のユーザーにとってはそれほどでもない(例えば、リタイアした方)という現実を反映したものだ。この「時間の価値」を変数として取り入れることで、ユーザーの選択行動をより現実的にシミュレートすることが可能になった。

具体的には、ユーザーが自ら充電する場合のコスト(C1)は、移動コスト(CD)、時間コスト(ht)、および電気代(E)の合計となる。一方、代客充電を利用する場合のコスト(C2)は、移動コスト(CD)、サービス料金(P)、および電気代(E)の合計となる。ユーザーが代客充電を選ぶのは、C2がC1以下、つまり「サービス料金(P)」が「時間コスト(h)」と「充電にかかる時間(t)」の積以下の場合である。このシンプルな不等式が、ユーザーの選択の分かれ道となる。しかし、h(時間の価値)が不確実なため、ある時間tで充電するユーザー群の中で代客充電を選ぶ人数も不確実となる。そこで本研究では、「代客充電サービス選択率」というパラメータを導入し、この不確実性をモデルに組み込んだ。

研究チームは、この複雑な多目的最適化問題を2つの段階に分けてアプローチした。第1段階は、長期的な戦略的決定である。どこに充電ステーションを建設し、それぞれに何基の充電器を設置するかを決める。これは、将来的な需要が不確実な中で行われる、大きな投資判断である。第2段階は、日々の運用に関する決定である。実際に発生した需要(ω)が判明した後、どのユーザーがどの充電ステーションで充電するか、あるいは代客充電サービスをどの程度利用するかを最適化する。この2段階のアプローチは、不確実な未来に備えながら、柔軟に運用できる現実的なフレームワークを提供する。

このモデルを解くために用いられた2つの手法、SAAとイプシロン制約法は、非常に強力なツールである。SAA法は、無限に近い可能性のある需要パターンを、有限のサンプル(例えば、10,000通りのシナリオ)で近似する。これにより、計算機上で現実的な時間で最適解を求めることが可能になる。イプシロン制約法は、利益最大化とユーザーの移動コスト最小化という2つの相反する目標を、片方を制約条件として扱うことで、片方に集中して最適化できるようにする。これにより、利益とユーザー負担の間にある「トレードオフ」を明確に可視化し、意思決定者が納得のいくバランス点を選びやすくなる。

研究の数値実験と事例分析の結果は、非常に示唆に富んでいる。まず、代客充電事業の利益を最大化することを最優先にした場合、最適な充電ステーションの配置は、地域の中心部から徐々に周辺部へと広がっていく傾向にあることが分かった。これは、周辺部にステーションを配置することで、代客充電スタッフの移動効率が上がり、運営コストが削減されるためである。しかし、この利益最大化の戦略には大きな代償が伴う。地域の中心部に住むユーザーが自ら充電ステーションまで行く場合の移動距離が長くなり、移動コストが大幅に増加してしまうのだ。つまり、事業者の利益を追求すればするほど、ユーザーの利便性が損なわれるという、まさに「ゼロサムゲーム」の構図が浮き彫りになった。

この発見は、都市計画や交通政策において極めて重要な示唆を与える。公共のインフラとしての充電ネットワークの整備は、単に民間企業の利益追求に任せきりにしてはならない。研究チームは、意思決定者は企業とユーザーの双方の利益を十分に考慮し、適切な立地戦略を選択すべきだと結論づけている。特に、ユーザーの「時間の価値」の上限(h0+h1)は、下限(h0)よりも代客充電事業の期待利益に大きな影響を与えることが分かっている。そのため、企業が新規市場に進出する際には、その地域のユーザーが時間にどれだけの価値を置いているかを徹底的に調査し、このパラメータを正確に把握することが成功の鍵となる。

本研究の実証分析は、安徽省合肥市の瑶海区を対象に行われた。既存の充電ステーションの位置情報と、32の需要ポイントをGIS(地理情報システム)を用いて分析し、108の候補地を設定した。その結果、ε(イプシロン)の値を変化させることで、利益とユーザー負担のトレードオフが明確に現れた。ε=0の場合は、ユーザーの移動コストを最小化する配置。ε=0.24の場合は、代客充電事業の利益を最大化する配置である。後者の配置では、確かに事業の利益は最大となるが、中心部の住民は非常に遠くの充電ステーションまで行かなければならない。

しかし、最も興味深いのは、ε=0.08という中間的な値を設定した場合の結果である。この配置では、代客充電事業の期待利益は、最大利益の85.83%という非常に高い水準を達成している。一方で、ユーザーの移動コストは、ε=0の配置と比べてそれほど悪化していない。この「85%の利益で85%の利便性」を両立する配置は、実際の政策決定や事業展開において、非常に現実的で望ましい「最適解」であると言える。完全な利益最大化を目指すのではなく、ユーザーとの良好な関係を維持しながら、持続可能な利益を追求するというバランス感覚が、この新興市場では求められている。

現在、代客充電サービスは主に大手新エネルギー自動車メーカーのアフターサービスとして提供されている。しかし、新エネルギー自動車ユーザーと充電需要が近年急速に増加していることを考えると、代客充電モードを独立したビジネスとして発展させるには、非常に広い展望がある。本研究は、この分野の将来の研究方向性として、充電スタッフのスケジューリング最適化とルート最適化の問題、そして代客充電サービスの最適価格設定の問題を提示している。これらの課題に取り組むことで、代客充電サービスはより効率的かつ魅力的なものとなり、EVの普及をさらに加速させる原動力となるだろう。

童岷、胡志華、上海海事大学物流研究センター、『オペレーションズ・リサーチ・アンド・マネジメント・サイエンス』、doi:10.12005/orms.2024.0252