共有電動車の利用動向を解明、新たな分析モデルが示す運営最適化の鍵

共有電動車の利用動向を解明、新たな分析モデルが示す運営最適化の鍵

都市の交通システムは、持続可能性という新たな時代の要請に直面し、その姿を急速に変えようとしている。その中で、共有電動車(Shared Electric Vehicles: SEVs)は、環境負荷の低減と交通資源の効率的利用という二つの重要な課題を同時に解決する可能性を秘めたモビリティの形として、世界中の都市で注目を集めている。しかし、この新興サービスの真の価値を引き出し、持続可能なビジネスモデルとして確立するには、単なる車両の提供にとどまらず、ユーザーの行動を深く理解し、需要と供給の精緻なマッチングを実現する必要がある。そのための鍵となるのが、データ駆動型の分析である。

最近、中国の交通工学分野の権威誌『交通运输工程与信息学报』(Journal of Transportation Engineering and Information)に掲載された一連の研究は、共有電動車の利用パターンを解明する上で画期的な成果をもたらした。この研究は、成都市を対象に、実際の運営データを用いて、ユーザーの移動選択に影響を与える複雑な要因を多角的に分析し、従来の分析手法の限界を乗り越える新たな枠組みを提示した。研究の主導者である西南交通大学の廖洋(Liao Yang)、羅霞(Luo Xia)、王紅傑(Wang Hongjie)の各氏は、単に「何が影響しているか」を列挙するのではなく、「なぜ」そして「どのように」影響しているのかという、運営者や都市計画当局が実際に活用できる深い洞察を提供している。

本研究の最大の特徴は、共有電動車の利用が持つ「時空間的自己相関性」という本質的な特徴を、分析の中心に据えた点にある。これまでの多くの研究では、特定の地域や時間帯の利用量を独立した事象として扱う傾向があった。しかし、現実の利用行動はそれほど単純ではない。あるステーションで車両が見つからない場合、ユーザーはその周辺のステーションを探しに行く。ある地域でイベントが開催されれば、その周辺地域の需要も連動して高まる。このように、空間的に隣接する地域や、時間的に連続する期間の需要は、互いに強く影響し合っている。この「空間的依存性」と「時間的依存性」を無視して分析を行うことは、地図の一部を切り取って全体を判断するようなものであり、結果に大きなバイアスを生む。

研究チームは、この問題を解決するために、まず成都市内の1,423の共有電動車ステーションの運営データを用いて、注文量の時空間的特徴を詳細に分析した。その結果、いくつかの興味深い事実が浮き彫りになった。時間的な面では、週末や休日における注文量が平日を上回ることが確認された。これは、共有電動車が通勤という日常的な移動よりも、レジャー、食事、社交といった非通勤目的の移動に多く利用されていることを示唆している。さらに注目すべきは、夜間(00:00〜06:00)に利用がピークを迎えるという点だ。これは、公共交通機関の運行が終了した時間帯において、共有電動車が「最後の1マイル」を担う重要な役割を果たしていることを意味する。空間的な面では、モラン指数(Moran’s I)を用いた分析により、どの時間帯においても、利用量が地理的に集積する傾向(正の空間的自己相関)が強く認められた。これは、利用が特定の地域に集中し、周辺地域との間で需要が連動していることを定量的に証明したものである。

これらの基礎的分析を踏まえ、研究チームは「S-T+S+T+5D」という新たな影響要因の定量化フレームワークを構築した。この複雑な名称は、分析の多面性を象徴している。S-Tは「時空間的特徴」、Sは「ステーション属性」、Tは「公共交通属性」、5Dは「5次元の都市環境特徴」を指す。このフレームワークの革新性は、単に要因を列挙するのではなく、それらの定義と測定方法にまで踏み込んだ点にある。例えば、従来の研究でよく用いられる「正方形のグリッド」による地域集計は、隣接関係を正確に捉えられないという問題がある。そこで本研究では、「正六角形のグリッド」を採用し、より自然な隣接関係を反映できるようにした。さらに、各集計単位の中心点を、その内部にあるすべてのステーションまでの距離の合計が最小になるように決定するという、高度な最適化手法を用いた。これにより、空間的な誤差を大幅に低減し、分析の精度を高めた。

また、都市環境の特徴(5D)についても、単なる「POI(Point of Interest)の密度」だけでなく、「近接性」(各ステーションからPOIまでの距離)と「集積性」(POIが点在しているか、それとも特定のエリアに密集しているか)という3つの次元で評価を行った。特に「集積性」は、ショッピングモールや大学キャンパスのような、特定の目的に強い吸引力を持つエリアの存在を捉える上で極めて重要である。これらの精緻な定義によって、都市の複雑な構造が、共有電動車の利用にどのように作用しているかを、より現実に近い形でモデル化することが可能になった。

分析の核心を担うのが、複数の識別モデルの構築と比較である。研究チームは、統計学の基本的なモデルである「一般化線形モデル(GLM)」、機械学習の代表的手法である「ランダムフォレスト(RF)」、そして空間的相互作用を明示的に扱える「一般化加算混合モデル(GAMM)」の3つを構築し、その性能を厳密に比較した。この比較こそが、本研究の真価を際立たせている。

GLMは、各要因と利用量の間に線形の関係があると仮定する。しかし、現実の都市生活は非線形の関係に満ちている。例えば、ステーションの収容台数が多ければ多いほど利用量が増えるという単純な関係は存在しない。一方、RFは、非常に高い予測精度を誇るが、その内部のメカニズムが「ブラックボックス」であり、なぜ特定の要因が重要と判断されたのかを説明することが難しい。運営者が「何を」すべきかを知るには十分だが、「なぜ」そうすべきなのかを知ることはできない。

そこで登場するのがGAMMである。このモデルは、非線形の関係を滑らかな曲線として表現できるため、要因の影響がどのように変化するかを視覚的にも理解しやすい。そして何より重要なのは、モデルの残差(予測と実際の差)に空間的自己相関が残っていないかを検証する点だ。もし残差に空間的パターンが残っているならば、それはモデルが重要な空間的要因を捉えられていないことを意味する。分析の結果、GLMとRFの残差には依然として強い空間的自己相関が認められたが、GAMMの残差はほぼ空間的に無相関となった。これは、GAMMが共有電動車の需要に内在する空間的依存性を、他のモデルに比べて圧倒的に正確に捉えていることを示している。

このGAMMによる分析から得られた知見は、運営の現場で即座に活用できる実用的なものばかりである。

まず、最も影響力が大きかったのは「ステーション属性」であった。その中でも、「収容台数」は決定的な要因だが、その影響は単純な正の相関ではなく、明確な「閾値効果」を持つことが分かった。収容台数が約70台までは、台数の増加に伴い利用量も増加するが、それを超えると逆に利用量が減少する傾向が見られた。これは、過剰な台数が運営コストを増大させ、ユーザーが車両を探す手間を増やす(効率の低下)ことから、サービスへの好意的な評価を下げている可能性を示唆している。この発見は、運営者がステーションの規模を拡大する際の「最適なサイズ」を判断する上で、極めて貴重な指針となる。

次に、「ステーション間の距離」も重要な要因である。分析では、隣接するステーション間の距離が約2kmを境に、その関係性が変化することが明らかになった。それよりも近い距離では、ステーション同士が需要を取り合う「内部競争」が激化し、結果として全体の効率が低下する。一方、それよりも遠い距離では、サービスのカバレッジが不十分となり、利用機会を逃すユーザーが増える。この「2km」という最適距離は、都市の密度や公共交通の状況に応じて微調整は必要だが、新規ステーションの立地選定や既存ステーションの再配置を考える上で、基本的なガイドラインとして機能する。

公共交通との関係も、従来の単純な「競合」や「補完」の枠を超えた複雑な実態が浮かび上がった。特に「地下鉄」への距離は、2kmを境にその影響が逆転することが分かった。地下鉄駅から2km以内のエリアでは、地下鉄の利便性が高いため、共有電動車との競合関係が強い。しかし、2kmを超えると、地下鉄のサービスが手薄になる地域で、共有電動車が「地下鉄の足」としての役割を果たし、需要が増加するという補完関係が顕著になる。これは、共有電動車が都市の公共交通ネットワークを補完する「ラストマイル」や「ミドルマイル」のソリューションとして、大きなポテンシャルを持っていることを示している。一方で、「空港」への距離は負の相関があり、空港周辺では利用が抑制される傾向が見られた。これは、空港に特化した送迎サービス(タクシー、リムジンバス)が充実しており、共有電動車のニッチが小さいことを意味する。

都市環境の特徴(5D)についても、興味深い結果が得られた。「土地利用の混合度」(多様性)は、ある一定のレベルを超えると、逆に利用量を抑制する「逆U字型」の非線形関係が確認された。これは、極めて高密度で多機能な中心市街地では、駐車スペースの確保が難しく、あるいは公共交通が非常に充実しているため、共有電動車の利便性が相対的に低下している可能性を示唆している。一方で、「娯楽施設の密度」、「大学への近接性」、「医療機関の集積性」はいずれも、利用量を促進する要因として強く作用した。特に大学への近接性は、学生という若年層のユーザー層が、共有電動車に対して高い受容性と利便性を感じていることを裏付けている。

このように、本研究は、共有電動車というモビリティサービスの背後にある、複雑でダイナミックな力学を、高度なデータ分析手法を用いて解き明かした。その成果は、運営者に対して、単なる直感や経験則ではなく、データに基づいた「意思決定のための理論的支え」を提供するものである。収容台数の最適化、ステーション間の距離設定、公共交通との連携戦略、そして特定の都市環境におけるサービスの重点配置。これらの戦略を立てる上で、本研究が提示した「S-T+S+T+5D」フレームワークとGAMMモデルは、今後、業界の標準的な分析ツールとなる可能性を秘めている。共有電動車が、一過性のトレンドではなく、都市の持続可能な未来を支えるインフラの一部となるために、このような科学的なアプローチが不可欠なのである。

廖洋、羅霞、王紅傑、西南交通大学、交通运输工程与信息学报、DOI: 10.19961/j.cnki.1672-4747.2024.05.011