脱磁状態の二重突出電動機におけるトルクリプル低減に向けた新型故障耐性戦略

脱磁状態の二重突出電動機におけるトルクリプル低減に向けた新型故障耐性戦略

電気自動車や航空機の推進システムにおいて、信頼性は単なる付加機能ではなく絶対的な要件である。駆動システムは部品故障が発生しても機能を維持する能力が求められる。二重突出電磁気機器(DSEM)はシンプルさ、コスト効率、堅牢性を併せ持つ次世代モータ技術として注目されてきたが、励磁回路の故障という重大な課題を抱えていた。励磁電流が遮断されると主要なトルク生成メカニズムが失われ、システム全体が停止するリスクがある。

南京航空航天大学(NUAA)と河海大学の研究チームはこの課題を克服する革新的な制御戦略を開発した。励磁喪失後の動作領域に特化したベクトル制御手法を導入することで、従来の「緊急退避モード」を高性能な故障耐性モードへと進化させた。本手法は銅損の最小化とトルクリプルの劇的抑制を同時に実現し、安全クリティカルなアプリケーションにおけるDSEMの実用性を根本から変革する可能性を秘めている。

従来手法の限界と新戦略の核心

励磁電流喪失時、DSEMは二重突出構造に由来するリラクタンストルクのみに依存する。このトルクは相電流の二乗と自己インダクタンスの非線形特性に比例するため、滑らかな制御が困難だった。従来の三相六状態制御のようなフォールトトレラント手法は矩形波電流注入に依存し、大きなトルクリプルと過剰な銅損という代償を伴っていた。

研究チームはこの問題を解決するため、誘導機や永久磁石同期機で確立されたベクトル制御の原理をDSEMの物理特性に適応させることに着目。瞬時電力不変の原理を基盤にした新しい数学モデルを構築し、トルク方程式を極座標系で表現することに成功した。このモデルは合成電流ベクトルの振幅と位相角がリラクタンストルクに及ぼす影響を明快に示し、最適制御の基盤となった。

二段階最適化アプローチの詳細

第一の最適化目標である銅損最小化では、特定のコサイン項が1に等しい条件下で最小銅損が達成されることを数学的に証明。この条件は逆起電力ベクトルの角度から導出される最適位相角によって満たされる。しかし単純な位相角追従では180度の不連続点が生じるため、状態機械ベースの論理回路を導入。電気周期を倍化させることで電流波形の連続性を保証し、物理的な実現可能性を確保した。

第二のトルクリプル抑制では、インダクタンスプロファイルの非正弦波特性を補償する動的振幅調整を採用。ロータ位置ごとに必要な電流振幅を逐次計算し、機械の非線形性を打ち消す「プリディストーション」方式を開発した。この技術により、理論的には完全に平坦なトルク出力が可能となる。

制御システムの全体像

速度コントローラがトルク指令値を生成し、マシンパラメータ(逆起電力度数)と組み合わせて振幅計算器が動作。位相角コントローラはロータ位置情報から最適電流ベクトル方向を決定する。両者の出力を統合して三相基準電流を合成後、標準的なヒステリシス電流制御で三相ブリッジインバータを駆動する。この閉ループシステムは既存のインバータトポロジーをそのまま活用できる実用性が特徴だ。

実験結果が示す劇的改善

18/12極DSEMプロトタイプを用いた実験では、従来の矩形波制御と新戦略を比較。200rpm・3N・m条件において、トルクリプル率が416.99%から46.1%へ89%低減。銅損も132.3Wから96.6Wへ27%削減され、エネルギー効率と機械的安定性が同時に向上することを実証した。

速度領域(200-600rpm)での評価では、矩形波方式が速度上昇に伴いトルクリプルと銅損を増加させるのに対し、新戦略は銅損をほぼ一定に維持。トルクリプルは高速域で若干増加するものの、従来手法を大幅に下回る性能を維持。相電流の基本周波数が半減する副次効果も確認され、インバータのスイッチング損失低減と高速動作範囲拡大の可能性が示された。

動的応答試験では速度急変や負荷トルクのステップ変化に対し、安定した追従性能を確認。故障時モードであっても健全な制御系と同等のダイナミクスを達成し、実用環境での有効性を裏付けた。

産業界へのインパクト

自動車産業では高価な希土類磁石を使用しないDSEMの採用障礙が低減。重大故障時でも走行継続可能な信頼性はEV普及の鍵となる。航空宇宙分野では、冗長性が求められる電動推進システムの信頼性基準を再定義する可能性を秘める。既存ハードウェアの潜在能力を制御アルゴリズムで解放する本手法は、省資源技術開発の新たなパラダイムを示唆している。

従来のフォールトトレラント制御が「機能維持」を主眼としていたのに対し、本研究は「性能維持」を実現した点が革新的だ。励磁喪失という深刻な故障状態でさえ、適切な制御戦略によって高効率・低振動動作を維持できることが示された。これは電気駆動システムの設計思想そのものに影響を与える成果と言える。

(著者情報) Lei Xiong, Hongjuan Ge, Bo Zhou, Siyuan Jiang, Jiadan Wei
南京航空航天大学 江蘇省新能源発電与電力変換重点実験室
Zhou Xingwei
河海大学
掲載誌:Proceedings of the CSEE
DOI:10.13334/j.0258-8013.pcsee.230036