電気自動車バッテリー冷却プレートのリブ構造設計による冷却性能向上研究

電気自動車(EV)の性能向上において、バッテリーの熱管理は最重要課題の一つです。高い出力が要求される急速充電や加速時には、リチウムイオン電池から大量の熱が発生します。この熱を効果的に制御できない場合、バッテリーの寿命短化や安全性の低下につながるため、効率的な冷却システムの開発が急務となっていました。

従来の液冷方式では、冷却プレート内を冷却液が流れる単純な構造が一般的でした。しかし、この方式では冷却性能に限界があり、特に均一な熱分散が難しいという課題を抱えていました。こうした中、鄭州大学と広東仏山共同創新研究所の研究チームは、冷却プレート内部に微細なリブ構造を追加するという画期的な解決策を提案しました。

研究チームを率いた劉歓歓と任小龍は、流体力学と熱伝導の原理に着目しました。滑らかな流路を流れる冷却液は層流となり、効率的な熱交換が妨げられることが知られています。そこで彼らは、流路内に意図的に乱流を発生させることで、熱伝達効率を大幅に向上させられるのではないかと考えました。

検証のため、研究チームは6種類の異なるリブ配置を設計しました。矩形、三角形、台形などの形状を、整列配置と千鳥配置に分けて比較試験を実施しました。高度な数値流体力学(CFD)シミュレーションを用いて、5Cという高率放電時のバッテリー温度分布と冷却液の流れを詳細に分析しました。

その結果、すべてのリブ構造が従来の平滑流路よりも優れた冷却性能を示しました。特に矩形リブを千鳥配置にした設計が最も高い冷却効果を示し、バッテリーの最高温度を大幅に低減させるとともに、温度ムラの解消にも成功しました。

しかし、優れた冷却性能には代償も伴いました。リブ構造による流路抵抗の増大により、冷却液を送り込むポンプの消費電力が増加するのです。この課題に対処するため、研究チームは総合的な評価指標としてj/f係数を採用しました。この係数は、熱伝達効率と流動抵抗の両方を考慮した性能評価指標です。

驚くべきことに、j/f係数で評価した場合、最高の冷却性能を示した千鳥配置ではなく、整列配置の矩形リブが最も優れた総合性能を示しました。この設計は、冷却性能を大幅に向上させながらも、ポンプの消費電力増加を最小限に抑える理想的なバランスを実現していたのです。

この研究成果は、自動車産業に重要な示唆を与えています。第一に、高価な新材料や複雑なシステムを導入せずとも、既存部品の設計最適化によって性能向上が図れることを実証しました。第二に、冷却プレート設計の明確な指針を提供し、車種の目的に応じた最適な設計選択を可能にします。第三に、EV開発においては、個々の部品最適化だけでなく、システム全体のエネルギー効率を考慮することが不可欠であることを強調しています。

今後の課題としては、シミュレーション結果の実証実験や、より複雑なリブ形状の最適化研究が計画されています。製造コストや耐久性などの実用面も考慮した多目的最適化により、さらに優れた冷却システムの開発が期待されます。

一見地味に見える冷却プレートの改良ですが、このような基礎的な工学的研究が、EVの安全性、性能、効率性を根本から向上させる可能性を秘めています。適切な内部構造を追加するだけで、冷却性能は飛躍的に向上し、より安全で効率的な電気自動車の実現に貢献できるのです。

本研究は、鄭州大学機械・動力工程学院および広東仏山共同創新研究所に所属する劉歓歓、任小龍、張澤斌によって行われました。研究成果は「Study of heat transfer and flow characteristics of liquid cooling plate with ribs of lithium-ion battery」と題して学術誌に掲載され、DOIは10.3969/j.issn.1002-087X.2024.07.013です。